114 扉を開いて1年が過ぎようとしている

あれは1年前のこと。

もう桜も散り始めた頃、これから付き合っていくことになるだろうと地元のゲイバーを検索し、場所を確認がてら花見でもしてこようと公園に出掛けた。

確か日曜だったと思う。車をゲイバーのあるだろう場所の近くに停め、公園まで歩いて行った。きっと公園近くの駐車場は混んでいるだろうと思ったから。花を惜しむ客でごった返していたその端を花を眺めててくてくと歩いた。この時すでにいい予感もしてはいなかったが、少しばかり浮かれていたと思う。春の日差しに汗ばみながら。

駐車場まで戻るその道すがら目的のバーの場所を確認した。当然まだ営業の時刻ではない。そのまま帰宅をした。

帰宅し一息ついて晩飯を食った後くらいにとても残念な出来事に遭遇した。もう一人ではその時の気持ちを収めることはできないと思った。ふと、昼間の扉が脳裏に過る。「行くなら今日だ」

再度検索をしてみると、昼間見た店はその日休業だった。ならばとその近くの別の店に行くことにする。まさか、確認をしたその日に行くことになるとは思わなかった。(結局確認したのとは別の店になったのだが)

それまで行けていなかったことからある種の怖さがあったのだと思う。だが、その時は何も恐れるものはなかった。扉はするりと開いた。

それでも、話そうと思っていたことの核心には触れられず、だがしかし安堵感だけを感じながらバーを後にした。しかも、急に思い立ったものだから車で行ってアルコールも入れなかったのに。

あれから1年、何ら変わってないような気もするし、変わったような気もする。その時のバーとは行きつけは違うところになったがただ行くだけで感じるものは変わらずにいる。