164 ビアードパパが売り切れた日

みんな大好きで良かったな。

甘党でもある俺。自分への褒美に時々買っている菓子、それがビアードパパのシュークリーム。これ以上のカスタードにはまだ出会っていないというほどここのカスタードは絶品だと思う。

友人を家に呼びデザートにするつもりだった。が、自慢のたらこパスタを馳走してあれやこれや話をしているうちに食べそびれてしまった。

ならばいつものバーに手土産で持っていこうということになり、6個入りの箱を抱えてドアを開けた。

月曜にしては客が多かった。酒にシュークリームはどうかとも思ったが、意外にもファンは多く、程なくしてその菓子は売り切れた。マスターの口には入らなかったが、彼は和菓子党だから大丈夫だろうと。

カラオケは否応なしに盛り上がった。俺も調子に乗って次々に曲を入れていった。数曲歌った後の歌の途中で珍しいことにマスターが「今日は上手だね」と褒めてくれた。歌のことでは初めて褒められた。何とはなしに褒められた理由が分かった気がした。ただ、嬉しかった。

歌の途中で予期せぬ言葉が入ったものだからそこからがいけない。たちまちうまく歌おうとする力みが入ってその言葉が撤回される。そんなことも微笑ましい。

あ、そうだ。もう一つ。「帰り道」を歌ったのだが、キーも合っているのか自分の歌にできそうだ。という発見も嬉しかった。少しおこがましさもあるにはあるんだがね。あとはたった一つの歌詞でこみ上げるものを抑えさえすれば完璧だな(笑)

楽しい雰囲気に包まれたまま(ビアードパパ効果?)閉店の時刻となる。

帰り間際、マスターから頼みごとをされる。いつかまたこのシュークリームをと。実は洋菓子でもシュークリームには目がないんだとその時に明かされた。

取り敢えず次に行くときにまたあの箱を携えて行こうと思う。