28 かなり昔の話だが、今でも思い出す
だが辛かったことを書きたいわけじゃない。タイトルにも通じるところがあると思うんだ。
それはもう何年前のことだかも忘れてしまったようなある夜のこと。
飲み会の席だった。辛い状況をおくびにも出さずにいることが我ながらうまくなってしまった頃のことだったと思う。
2次会はカラオケ。同僚(女性)の選曲は「Piece of my wish」だった。背中越しにその曲を聴きながら何故だか無性に励まされている気持ちが残った。この時ほど「女性の勘は鋭い」と思ったことはない。俺が彼女の歌を聞いたのは後にも先にもその時だけだった。
だが、彼女は何も言わなかった。そしてその数年後、俺がその職場を離れるときに彼女がはなむけに贈ってくれた言葉が「いろいろあったけど・・・」だった。俺は「ああ、やっぱり」とそれでも何の確証もないのにそう思った。
ひょっとするとまったくおかどちがいなことなのかもしれないが、そうやってずっと励ましてくれてたんだなと思う方が腑に落ちる。
それがあるから今だってきっと会えば笑って話ができるんじゃないかと思う。
そして口に出しては言わないが、心の中でこう呟く。
「あの時にあの歌を歌ったことは忘れないよ」
そして幾度となく一つのフレーズが胸に響く。
”希望のかけらを掌に集めて 大きな喜びへとかえていこう”
「今日もいいことなかったな」ではなく、「今日はこんないいことがあった」といいこと集めをしていこうとその度に思うわけである。