139 鳥のさえずりの森にて

俺のゴールデンデイの前半の話。

珍しく目覚ましで起きなければならなかった朝は慌ただしい。充実した一日にするためにちょっと頑張った。

思えば開通した高速を使って田舎に帰るのは初めてだった。目的は2つ。墓参りと守るものを得ること。

ゴールデンウィーク明けの道はすいすいと走れ気持ちがいい。順風すぎて何か起こらないかと逆に心配になる。

新しい道の効果は絶大だった。目論んでいたよりも30分も早く目的の地に着く。少し寒いな。樹々が鬱蒼としているからという理由もあるのだろう。

その寺のご利益に惹かれ訪れた。地元にいたときは近寄りもしなかったことが少し悔やまれる。目的のものを授かって肩の荷が下りた途端、耳に鳥のさえずりが飛び込んでくる。いい場所だ。

身を削られて子どもの頃とは全く違う姿になってしまった山も対面にある。それでも相変わらずに盆地の街を守るように見降ろしてる。

社務所のご婦人と少し会話しご苦労様ですとの声に見送られて次の場所に向かう。いやその前に手向ける花を買わなければ。

いつも行くスーパーはまだ開店していないほどの時刻だったから、幼い頃によく連れられて行ったスーパーまで走り花を買うことにした。よく行った近くの食堂はまだあった。あの昭和の香りのするラーメンをまだ出しているだろうか。

まだ食堂は開いてなかったから花を買うついでに郷土のB級グルメを探した。帰るといつも買うやつである。ちょうど総菜を並べ始めているお姉さんがいてそれができあがる時間を聞いた。もうできているという。遠くから来たからと恐縮しながらも出してもらい2パック購入することができた。以前なら売り場にない時点で諦めてしまっていただろうに。

うちの墓はやはり街を見降ろす高台にある。心の中で近況を話すと今年も役を全うできた気持ちになった。

そこまでを終え、踵を返すように帰る。帰りも驚くほど早く車を進めることができ、午後の予定まで家でのんびりすることができた。もしものために着替えを持って行ったが車の中で着替える必要はなくなったのであった。