33 あんなに嫌いだったのにな
昼に家にいるときは大抵麺なのです。
本日は天ざる。天ぷらはシュンギクのみ。何故ならばシュンギクの天ぷらを食いたかったからだ。
かなり最近までシュンギクは数少ない食べられないものだった。パスワード忘れ対策を「嫌いな食べ物は?」にしていたが長いことそのワードは「シュンギク」だったくらいだ。
食わず嫌いではない。口に運んだことは何度かあった。しかしその後決まって頭痛になる。匂いがダメだった。
食べられるようになる瞬間は不意に訪れる。蕎麦屋で天ざるを頼んだ。天ぷらの一つがシュンギクだった。空腹のため、食らいついたそれはとても旨かった。それ以降シュンギクの旬を待っていた。
それが本日という訳なのだ。
かなりいい加減に衣を溶き、油で揚げる。葉は少しパリパリ目なのがいい。
いい加減寒いから麺つゆは温かいのにした。蕎麦より先に天ぷらをつけて食らう。
「旨し」
冬の入り口の味がした。もうパスワード対策は「シュンギク」ではできないな。