212 屋根の上のゴーレム

何を思ったか「MINECRAFT」を片手間にやり始めた。

この前やっていたのは2年以上前のことだ。やがて不具合から遠ざかりやらなくなってしまった。ふと思いついて起動するとランチャーがアップデートされていて起動ができるようになりまたやり始めたというところ。新しいワールドの名前は「Beautiful World」だ。

新しいワールドに降り立ち、暫くは独りだった。やがて冒険に出かけた先で村を見つけてその端っこに住まわせてもらう。村人を守るため柵を張り巡らせる。やがて、村人は安定した生活に人口が増え始める。それと共に生れ出たのがゴーレム。村の守護神だ。村人を守るためにその存在はあるのだろう。

ある日村を見渡すと1体のゴーレムが屋根の上にいた。そのゴーレムは屋根の上を行ったり来たり。逡巡しているようだった。

暫くして襲撃があったがその時も屋根の上で右往左往するばかり。守りたいのに・・・。ゴーレムには落下耐性が少なからずある。また人間でも落ちて死ぬほどではない高さである。それなのに飛び降りようとしない。

ああ、もしかするとあれは俺?

俺は屋根の近くに足場をこしらえた。ほどなくしてゴーレムは屋根の上から降りてきて平和になった村を闊歩している。

211 EMPTY GARDEN

ドアをノックし続けているのかもしれないな。

洋楽のヒットチャートにはまっていた頃があった。ああ、この曲いいなと思うものはできるだけ手元に置いておくようにした。何度も聴くものもあれば何だかイメージが違って1回聴いたきりという曲もあった。

「Empty Garden」/エルトン・ジョン

この曲もいいとは思っていたのだがついぞ購入することはなかった。知っている人は知っているだろう。ジョン・レノンへの追悼歌だ。

さて、俺の傍らにも小さいながら庭がある。エンプティどころか要らないもので埋め尽くされている土の部分のない庭だ。

ふと、この庭を空っぽにしたくなった。何もないところから始めたあの頃のように。思えば、自分の終の棲家を作るための道具やら部材やらだ。

もう、必要はない。

210 穏やかな山並

やはり内陸の育ちだからか山を見ると落ち着く。

いつだったか一人で北の山に登ったことがある。登山道の入り口には名簿があって入山するにはそこに名前を書くようだった。熊が出るかもしれない花の百名山。思い付きで寄ったところだったから対策を講じていたわけではない。ただ、誰もいないのをいいことに大声で歌を歌いながら登った。案の定、誰にも会わなかった。

今こうしているわけだから無事に上って降りてこられた訳だが我ながら怖いもの知らずというかなんというか。

なんとなく人生は山道を歩くようなもののような気がしている。ずっと稜線を歩いていくような。2つ、大きな山を通り越してきた。それは感情の起伏も相まってほとほと疲れていたんだろうと思う。それでもまだ稜線は続いている。しかしなだらかだ。

ふと隣に誰かいるようないないような。また、なだらかだと思っている道も脇に崖があるようなないような。

それでも微笑みながら歩いている。

よく知っている道のようで改めて眺めると初めてのようにも思える。そしてその道に安堵し始めてもいる。

今、そんな道を歩いているような感覚。