222 ようこそここへ

しあわせの青い鳥。

二人で散歩に出掛けた。公園にはお年寄りが目立つ。立ち止まって水辺を見ていた老婦人に声を掛けられた。例のごとく俺は耳が悪いせいで聞き取れなかったが何を言っているのかはすぐにわかった。

カワセミがいるよ」

目を向けると確かに青い鳥がそこにいた。ずっと会ってなかった。

なんだかすごく意味のあるようなことに思えてしばらく見ていた。カワセミは飛び去り老婦人にお礼を言わなくてはいられない気持ちになった。

「ありがとうございます」

こんなふうにちょっぴりのほっこり感を残せる鳥はやはりしあわせの鳥なんだと思った。

今までは俺の幸せの鳥だと思ってはいたが、今回のことでふたりのしあわせの鳥になったんだ。

221 俺たちのオンライン呑み会

まずは乾杯だ。

月一回のペースで会えるかなと思った矢先この状況。会えない日が続く。でも毎日会っている。LINEで。

オンライン呑み会というものをしてみようということになった。ただ呑むだけじゃなく二人で俺の作ったものをつつきながら・・・。

と、思っていたのだが、忙しい折送って残っていたものは食べてしまった。ただ一つ、独活のきんぴらを除いて。これは失敗だ。

乾杯をして俺の作ったものに箸をのばす。取り急ぎ作ったものだったから出来はともかく旨いと言ってくれる。こうして二人きりの呑み会が始まった。彼は黒ラベル。俺は一番搾り。(だったっけ?)

他愛のない話、将来の希望などを話しながらあっという間に時は過ぎていく。なんだなかなか楽しいじゃないか。これはアリだな。

またやろうねと2時間くらいでお開きにした。

そうやって俺たちは焦れるよりも育てているんだと思った。

220 理想の人と「男はつらいよ」

少しはぐらかして答えるのが常になっていた。今じゃあとんとそういうこともなくなっているのだが。

長いこと独身でいると結構頻繁に浴びせられる問い。それは「どんな人がタイプなんだ?」というもの。俺には予め用意しておいた答えがあった。それは「いつの間にか隣を歩いている人」だった。それは確かに自分の正直な気持ちだ。そう、そんなところで俺は嘘をつけない。

だが、少しずれている。多分質問者はそういうことではなく容姿がどうかとか、性格はどうかとかそんなことを聞きたいのだと思う。まあでもそうやって少し天然を装いながらそんな問いをかわしてきてはいたのだ。(実は装っていたのではなかったという説もあり)

しかし、たいていの場合そこでかたが付いていたのではあるが極稀に「いや、そうじゃなくてさ」とさらなる追求をするやつもいた。それについても答えは用意してあった。それは・・・。

答えの前にその答えを用意するに至った映画の話をしよう。それが「男はつらいよ」である。多分自分から進んで見るような映画ではないからバス旅行の時に見たんだろうと思う。もうかなり前のことだから正確ではないかもしれないが記憶を紐解いてみると確か同じような問いが発せられていた。その時に(寅さんが言ったのではないと思う)「額の広い人がいい」と答えていたはずだ。「そういう人は聡明だから」というのが理由のようだった。確かに倍賞千恵子さんは額が広い。そう言われてみると非常に好ましく思えた。俺はこれだと思った。俺のでこフェチは多分そこに端を発する。

どうやら俺の額は母方の血を多く受け継いでいるらしい。祖母の写真を改めて見てみると確かに狭い。きっとないものねだりなのだと思う。

さて、最初の答えに戻ると今の状況だと答え通りになるのは少し先のようだ。そんな理想が現実になるのを確信しながら日々を暮らしている。