214 最初の扉

 あれはもう2年も前のこと。

「も」って言えちゃうほどなんだな、これが。それだけ長い年月が経っているわけでもないのにな。つまりは過去の出来事。

アプリで知り合って暫くはメッセージのやり取りだけだった。その内容から会えば何かはするだろうと思っていた。そのうち会おうということになった。

場所はとあるショッピングモール。相手は飯を食ったばかりだというが俺は腹が減っていたから食事がてら会話を交わす。

その後、その人の車へ。また少し話をしているうちにそっち方面の話へと移り変わりその人はおもむろに俺の手を自分の股間へと導いた。

初めてで何をすればいいのか分からなかった俺に業を煮やしたのかもしれない。そんな始まりだった。

ただ俺は思っていたよりもずっとシンプルなものなんだと思ったことを覚えている。だから流れに任せて好きなようにした。

これが始まり。

その人とはそれっきり二度と会うこともなかった。

ただ、入り口としては上出来の出来事だったと思う。

その人の口はやけに魚臭かったな。昼飯は魚だったんだろう。