180 ただそれだけのためにそこへ行く
梅雨明けも間近となるとそろそろと思うんだ。
わざわざ足を運んでまで見に行きたい花というものはそんなにたくさんはない。だからこそその時期になると思い出したように足を運ぶようになる。見に行くといっても高々1周して終わり。見終わったらその足で帰ってくる。ついでに何かしてこようとか何か見てこようとは思わない。ほんの何十分かの逢瀬である。
もう少しすればサギソウが咲く頃だ。
俺はそのためにとあるところまで行く。多分他にも咲いているところはあるのだろうが何故かそこである。それはきっと自生地(厳密には違うらしいが)だからなのだと思う。人工的に植えられたものならそれほどまでに魅力は感じ得なかっただろう。
当然のことながら植物には植物の適した土地というものがある。それを人間がどんどん狭めていってしまったのではあるが、そんなことは今更いっても栓がない。
とにもかくにも適した土地に巡り合えてそこにしっかりと根をおろしている。そんな存在感といったものに惹かれているのかもしれない。
そして年に一度訪れては安堵しているのだろうと思う。
今年も行こうと思っている。
君はそこにいる。俺にもそんな場所が見つかるといいな。